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苦手な人物
筆者:元永


「なぁ、知ってるか?」

 放課後、授業終了と共にやってきた友人の第一声である。……こいつは、いつも唐突だ。
 友人の言葉に、俺は軽い頭痛を感じ眉間を押さえる。
 ……主語を入れてくれ、頼むから。

「我が友よ、日本語には主語というものがあるという事を知ってるか?」
「馬鹿にしてるのか? それくらい知ってるよ」

 友人は少し不愉快気に言ってのけた。
 ………。俺は無言で友人の頭を殴った。

「いてっ! なんで殴る!?」
「知ってると言うなら、会話でもちゃんと使え、主語を!」

 この友人が、ここまで馬鹿だったとは……。友人は「どうして、いつもいつも殴られにゃならないんだ……」などと文句を言いつつ(むろん、黙殺した)先の言葉の説明をする。

「『中に居る』の事だよ」

 ……説明の割には、一言で済んでしまったが、まぁいい。
 俺は『中に居る』というワードで、己の脳内に検索をかけた。
 …………ふむ。

「知ってるが? それがどうした」
「え? いや、お前、こういう話、好きじゃなかったっけ?」
「む?」

 その言葉に俺は今まで興味を持った話をざっと頭に思い浮かべる。

「……そうだな。確かに、結果としては怪談や都市伝説の類に興味を示す傾向があるな」
「…お前って、そういう湾曲した表現、好きだよな……」
「しかし、『中に居る』に関しては興味の対象としては弱いな」
「え? そうなのか? なんか、実際の事件と関連付けられてたりして、微妙にリアリティがあるから興味あるかと思ったんだけど…」

 ……そもそも、俺は怪談や都市伝説が好きな訳ではないのだがな。
 むぅ、説明は面倒だが仕方ない。

「……、そもそも俺は怪談や都市伝説が好きなわけじゃない。俺の好きな要素を含んでいる率が高い物語が、怪談だったり都市伝説だったりするだけだ」
「………はぁ? ちょっと、意味が分からないんですが?」

 ………まぁ、これだけの言葉で理解できるとは思ってなかったが、……面倒だ。

「はぁ、“好きな要素”これを一言で言うなら“曖昧さ”だ」
「あいまいさ?」
「そう、怪談や都市伝説なんかは、基本的に超常なる存在や力を題材にした物語だろ?」
「…そうだな」
「そういった、一般的に存在しないとされるものを題材にしている以上、どうしても物語に“曖昧さ”が含まれる」
「……確かに、そうかもな」
「結果、俺が好きな物語は怪談や都市伝説の類である事が多い、という事になる」
「………あぁ、なるほど」

 ……どうも、思考時間が長いなこいつは…。

「で、『中に居る』に関しては、さっきお前が言ったように物語に微妙にリアリティを持たせようとされている。“リアリティを持たせる”というのは言い換えれば“曖昧な部分を明確にする”という意味になるだろう」
「ちょ、ちょっと待ってくれ……、あ、あぁ、そうだな、確かに」

 本当に理解しているのか怪しいな……。

「そういう意味で『中に居る』という物語には“曖昧さ”が少ないと言える。…少なくとも他の都市伝説に比べればな。よって―――」
「お前の興味対象になりにくい?」
「その通り、『中に居る』と実際の事件の関連性なぞ、興味の対象にはならんさ」

 よし、友人が理解した所でさっさと帰ろう。もう放課後だからな。
 全く、友人の所為で面倒な説明をさせられた……。

「ちょっと待て、“好きな要素”が“曖昧さ”ってのはどういう意味だ?」

 嬉々として帰り支度をしていた俺に、更なる質問が降りかかる。
 ……こ、こいつは、また、説明が面倒な質問を……、こっちの苦労を少しは考えろ。

「はぁ……、そうだな…、“曖昧さ”というのも実を言うとあまり正確な表現ではない」
「え?」
「正確には、そういった“物語の曖昧な部分を自分勝手に考察する事”が好きなんだ」
「…………、えっと、要するに“考える”のが好きって事か?」
「…まぁ、そうも言える。正確ではないがな」
「え? じゃ、推理小説とかで良いんじゃ?」
「馬鹿め」

 俺は思いきり友人を馬鹿にした。言葉だけでなく視線や表情でも馬鹿にした。

「なんで!?」
「あんな明確な物語が他にあるか! 最後に謎解きなぞする物語のどこに“曖昧さ”がある! 別に嫌いな訳ではないが“そういう意味”では好きじゃない!」
「え!? でも、“考える”のが好きなんだろ?」
「だから、それは“正確ではない”と言っただろう!」

 ええい! イライラする!

「いいか!? 推理小説には“明確な答え”があらかじめ用意されているだろ!? そんなもののどこに“勝手な考察”が入り込む余地がある!? 俺は“曖昧な部分”を“自分勝手に考察”して、その結果に対して正解とか間違いとか、そういうものの無い“宙ぶらりん”なものが好きなんだよ!! 分かったか!?」

 久々に俺はキレた。絶叫した事で幾分冷静さが戻ったが、この“教室内の視線を一身に浴びた”状況はどうも……。
 目立つ事は、殊更嫌いではないが、こういう意味で目立つのは流石にな……。
 “好き嫌い”の話は感情が高ぶりやすくて駄目だ。特に俺の感性は他人に理解されにくい所為か、いつもイライラする。(そして、最終的にキレる)
 友人は友人で、突然キレた俺に唖然としている。
 むー………、参ったな。

「ふむ、中々、興味深い話だな」

 突然、発せられた第三者の声に、反射的に俺の視線が動く。
 すると視界の隅に、俺が“最も苦手とする人物”が映った。俺は極自然にその人物を視界から排除する。
 迂闊だった。“奴”の接近に気づかないとは……。
 俺は奴を視界に収めないよう、細心の注意を払い(その上で、あくまで自然に振舞い)つつ、カバンを手にする。(既に帰り支度は済ませてある)
 友人には悪いが、俺はここで退散させて頂く。

「では、俺は帰る」
「え! ちょ」

 友人の慌てる声を黙殺して、俺は迅速に教室を後にした。
 その際、進行方向に居る人間が左右に分かれた。普段ならモーゼの気分を存分に味わう所だが、今回はそんな余裕は無い。………無念。





 ………。本当に帰りやがったアイツ。
 状況からして、かなり慌てていたはずなのに、その動作を“自然な帰宅”に見せるあたり、“流石”と思うと同時に、呆れてしまう。
 ……いや、あの絶叫の直後に“自然に帰宅”するのは、それはそれで、……不自然だな。

「この私を完全無視とは……、多少ショックだな」

 いや、全然ショックそうでない声音でそんな事言われても……。そう思いつつ視線をその人物に向ける。
 さっきは、突然キレたアイツに唖然として、そちらを気にする余裕が無かった。そのため、この時はじめてその人物を視界に収めた。
 ………、先輩だな。うん、先輩だ。名前は知らない。話をした事も無い。見かけた事はある。アイツが苦手な人物として上げていた事を思い出す。その際の理由は“奴からは俺と似て非なる匂いを感じる”という意味不明なものだった。…というか、なんで二年の教室に居るんですか?
 …………とりあえず、この人物について持ちうる情報を列記して見たがどうだろう?(最後のは純粋な疑問)
 うん、意味不明だ。
 はっきりしている事は、アイツが即座に逃亡するような人物であるという事である。ここは、必要以上に関わらないのが吉だろう。
 そう、結論付けて俺が視線を逸らそうとした時、その“先輩”がこちらに視線を向けてきた。おかげで俺は視線を逸らすタイミングを逸してしまった。

「………」
「………」

 な、なんで、無言でじっと見てるんですか? 俺の顔はそんなに面白いですか? ていうか、なんなんですか、貴女? 意味わかんないです。
 で、その先輩はひとしきり俺の顔を眺めると「……ふむ」と何やら納得。(何に納得したかは不明)
 そして、何事も無かったかのように視線を外した。

「さて後輩、部活動を開始しようか」

 そんな事を言いつつ、俺の前から去っていった。
 なんなの一体!? 物凄く精神的に消耗した!! ていうか、“後輩”って誰の事!?
 俺はその先輩を視線で追った。先輩の向かう先には式見の姿が見える。
 後輩って式見の事かよ!? あ、他にも神無とか“無意味に明るい幽霊少女”とか見えるけどさ!
 ていうか、なんなのあんた達! 式見は退院したと思ったら、“やたら明るくて、ある意味不気味な幽霊少女”(明るい幽霊って不気味じゃない? 逆に)を引き連れてるしさ! あの時、凄い驚いたんだから! その上、“幽霊と接触”してるし!!
 平静を装うの大変だったんだから。アイツが来るのに少し間があったから、アイツの前では普通に振舞えたけどさ。
 でも、前回のあれは何!? 幽霊使って人をすっ転ばそうとするなよ! しかも、あんな場所で! 迂闊……ていうか“自覚無すぎ”!!
 おかげで、無茶苦茶怪しい言動取っちゃったじゃん!! 俺! アイツも式見に興味持っちゃったし!
 ていうか、今の精神状態がやばすぎる!! 落ち着かないと!
 と、そこに式見の声が聞こえて来た。

「先輩のおかげで、すこぶる混乱しているクラスメイトが一人居るんですが」

 お前も原因の一端だよ!!
 混乱している俺なんか関係無しに聞こえてくる会話の断片が、俺を混乱のるつぼに叩き込む。

「……帰宅部だ!」

 帰宅部ぅっ!?
 なんか、もう俺を混乱させようとしているとしか思えない!! 頼むから黙って、俺の心の平穏の為に!





 結局、式見達は何やら意味不明な漫才を繰り広げつつ帰宅していった。(……部活?)
 残されたのは異様に精神が消耗した俺……。これは、…新手の精神攻撃だな。
 突っ込み入れたいけど下手に突っ込みを入れると、俺が幽霊を認識できる事がバレかねないという……。ストレスだけが溜まったよ……まったく。
 俺にとって“幽霊と関わりを持つ”というのは「やってはいけない事、TOP3」にランクインする出来事だ。それと同時に俺と関係の深い友達だとかが幽霊と関わるのもよろしくない。
 ぶっちゃけ、アイツが式見に興味を示している現状は俺にとって良いものではない。まぁ、『中に居る』に興味が無い事が分かったのは収穫だったが……。
 アイツが行動を起こす前に、何らかの対応策を講じる必要があるとは思うのだが……。そうすると、俺が式見達に関わる事になるわけで……、それはイコールで幽霊と関わる可能性を示しているわけで、……ぐはっ、どないせいっちゅーんじゃ!
 ……あぁ、でも別に式見でなくとも、アイツの方を説得すれば……、駄目だ、アイツに話術で勝てる気がしない……。
 ……かといって、腕力で勝てる気もしない。……あれ? 全然駄目じゃん! あぁ……、へこんで来たぁ。
 しかも、下手に突っつくとアイツの興味をより引く可能性も……、現状維持の方が現実的か?
 でもなぁ、アイツは俺がしらばっくれると意外と簡単に引き下がる癖して、その後、俺の知らない所で勝手に結論を出すからなぁ。しかも、結構事実に近かったりするのが厄介だ。

 …………帰るか。





「ところで先輩」
「なんだい? 後輩」
「さっき教室でクラスメイトを見つめていたのは一体なんです?」

 一瞬、驚いたようにこちらを見る先輩。僕の言葉のどこかに驚くべき要素はあっただろうか?

「……おや、後輩に嫉妬されてしまった」
「してません」
「何、照れる必要は無い」
「照れてません」

 先輩は「皆まで言うな、全て判ってる」とでも表現できそうな表情で、僕を一瞥すると質問に答え始める。
 ……なんだか凄く腑に落ちない。でも、ここでこの話題を続けると、延々とからかわれる事は目に見えているので口をつぐむ。

「どうやら、共通の知人がいるようだったからな。ちょっと、観察しただけだ。他意はないから安心しろ」
「そうですか、最後の言葉の意味は分かりませんけど」

 はぁ、なんだか軽く死にたくなってきた。





 俺は奴(名前を呼ぶのはごめんだ、ましてや“先輩”などと呼ぶ事はありえない)から逃れた後、適当に街を歩いていた。

「あれ? 先輩?」

 そこに声をかけられた。俺を先輩と呼ぶ人間に心当たりは一人しかいない。
 振り向くと、予想通りの人物が確認できた。

「む、妹か、どうした?」
「……あの、その『妹』っての止めません?」
「ん? 何か問題があったか?」
「いえ、私、先輩の妹じゃないし、名前で呼んでくれた方が……」
「? 俺の友人の『妹』じゃないか、どこにも問題は無いように思うが……」

 俺は首をかしげる。……やはり問題は無いな。大体――

「妹の名前は覚えてないしな」
「ちょ! マジっすか!?」

 とても傷ついた表情で俺を睨む妹。流石の俺もこれには「悪いな」と思ってしまって慌てて言いつくろってしまった。

「いや、流石に冗談だが」
「……本当ですか?」
「あ、ああ」

 俺は曖昧に肯きつつ、脳内に高速で検索をかける。……む、むぅ。ヒットしない……。ひょっとして、かなり最低人間じゃないか? 俺。

「じゃ、私の名前、言ってみてください」

 そんな、超難度問題を突然出題されてもなぁ……。

「そんな、超難度問題を突然出題されてもなぁ……」

 気づいたら、口に出していた。

「や、やっぱり覚えてねぇー!」
「いや、待て、本当、覚えてるから」
「じゃ、言ってみてくださいよぉ〜!」
「む、ぬぅ……、リ、リィン・リンクス?」
なんでカタカナですかぁーーー!!!!!!

 自分でも分からんよ。





「で、何故か俺は喫茶店なぞで他人の妹にデザートを奢っている訳だが……」
「先輩がレディーの名前を忘れているのが悪いんです」

 (これが、レディーかどうかはともかく)それを言われると言い返せないわけだが……。
 結局、あの後、妹の事は今まで通り『妹』と呼ぶ事で落ち着いた(色々と妥協案は出したのだがお気に召さなかったらしい)。

「先輩、黙々と食べてるだけじゃつまらないので、何か話しましょう」
「ん? それには同意するが、俺は女の子が喜びそうな話はできんぞ」
「あ、それには期待してません」

 極自然にそんな言葉が出るあたり、本当に期待されていないらしい。
 ……相手が自分を理解してくれていると、考えておくとしよう。

「なので、私が先輩に興味ありそうな話題を振るので、もう語っちゃってください」
「いや、語るかどうかは分からんが……」
「んー、どんな話題が良いかな?」
「聞いてないな」
「あ、じゃ、こんなのはどうです?」
「……言ってみろ」
「幽霊的な話題で“もし幽霊が本当に存在したとして、幽霊が視える人と視えない人の間にはどんな違いがあるのか?”ってのはどうです? よく、霊感があるとかないとか言いますけど、そもそも“霊感”がなんなのかしっかり説明してくれないと納得できるものでもないでしょ?」
「ふむ、確かに興味深い題材ではあるな」
「先輩の好みは大体把握してますからっ」

 それほど、頻繁に付き合いがある訳でもない妹にこんな事を言われると“俺はそんなに分かりやすいのか?”などと思ってしまうが、今は考えない事にする。

「“幽霊が存在する事を前提とした場合、幽霊が視える人間と視えない人間に分かれてしまうのは何故か?”という事だな」
「そです、そです」
「ついでに言うと、機械による観測が難しい事も不自然だな」
「ん? でも、心霊写真とかありますよね」
「そうだな、だが俺としては“あれ”は幽霊の存在を証明する証拠としては弱いと思っている」
「そうなんですか?」
「心霊写真はその殆どが“偶然”撮影されたものだろ? 撮影しようと思って確実に撮影できるものではない」
「うん、そうですね。確かに」
「要するに“どういう状況下で撮影できるのかが明確じゃない”訳だ。それは、何かの存在を証明するための証拠としては致命的だと思う。それに、心霊写真は偽者も多いしな」
「はぁ、なるほど」

 ふと、(友人の妹とはいえ)女の子と喫茶店に入って、こんな話をしているのははたして正しいのか? と思ったが、深く考えないでおく。
 元々、自分が“一般人的行動”から外れている事は自覚しているので、今更こんな事を考えても仕方が無い。

「話を戻そう。まず、“視える視えない”を論ずるよりも先に“一般的な人間の目が認識できる物”を明確にしておく必要がある」
「ん? それって“光”ですよね」
「そうだ。より正確には“人間の可視域にある波長の光”だ。人間は光の全てを認識できる訳ではない」
「あ、確かにそうですね」
「それを踏まえて、“霊を視る”という事はどういう事なのか考えると、まず、“普通の人間には視えない”事から可視光線によって霊を認識している訳ではない事は分かる」
「うん、そうですね」
「そうすると、考えられるのは三つ。一つ、人間の可視域外の光を認識している。二つ、光以外の“何か”を目を通して認識している。三つ、そもそも目を使って霊を認識している訳ではない。こんなところだろうな」
「え? 三つ目って、“視る”とは言えなくありません?」
「そうともいえない。“存在しないものを見てしまう”という現象は確かに存在するからな」
「それって……」
「極度の疲労、アルコールなどの薬物中毒による禁断症状、まぁ、原因は色々だ」
「幻覚ですか? でもそれは」
「確かに、“幽霊が存在する”という前提がある以上、幻覚を結論に持ってくる訳にはいかないが“目に見えないものを目で見たと認識”する事が確かにある。それを理解しておく必要はあると考える」
「はぁ、なるほど。それじゃ、一つ目の奴ですけど……」
「うむ、それも突っ込みが入る所だろうと思っていた。人間の可視域外の光なんてものは機械の手を借りれば観測が可能だからな。これが正しいなら幽霊の存在はとっくに証明されていないとおかしい。と、まぁ、普通は考えるんだが」
「? 何かあるんですか?」
「考え方によっては一つ目も捨て切れなかったりする。が、それは後で話すとして最初に突っ込みが入った所から話すとしよう」
「……まぁ、良いですけど」

 どうやって説明するのが分かりやすいのかを頭の中で考える。……やはり何か例を挙げて説明するのが良いか…。

「ふむ、……音を色で認識する人間がいるのを知っているか?」
「え? いえ……」
「いるんだ。これは、聴覚情報を視覚情報として処理していると考える事ができる」
「はぁ、なんとか理解できますけど、それが?」
「要するに人間は人によっては、視覚以外から取り入れた情報を視覚―――目で見たものとして処理できるという事だ」
「んー、なんとなく、何が言いたいのかは分かってきましたけど……」
「“幽霊を視る人間”というのは周囲から視覚以外の情報―――または、視覚情報も含むかも知れないが、それらの情報から幽霊を目で視たと認識しているのではないか、という考え方だな。これなら、普通の人間が幽霊を視れないのも機械による観測ができないのも説明がつく」
「ん、まぁ、そこまでは分かりましたけど、“幽霊を視る人間”が感知する“情報”ってのは結局なんなんですか?」
「そんなものは知らん。俺の知識が及ぶ領域じゃない」
「う、うわっ。なんか、凄い無責任!」

 そうは言っても、分からんものは分からんのだから仕方が無い。

「で、次だ」
「わっ、スルーですか」
「さっきの“幽霊の存在はとっくに証明されていないとおかしい”という奴だが、幽霊なんてものはとっくに発見されているのではないのか? という考え方ができる」
「え?」
「あー、まぁ……、黙って聞け」

 とはいえ、ちょっと説明が面倒なんだが、んー……。

「要するに、昔の人間が“幽霊”と呼んでいた何かが、現在では幽霊とは呼ばれていない。って事なんだが……」
「ん?」
「あー、まぁ、昔は幽霊と呼ばれていたものが現在では、ただの自然現象か何かとして処理されているんじゃないかって事だ。これだと、いくら機械で観測できたとしても、それはただの自然現象であって幽霊って事にはならない。で、これだと条件さえ満たせば“霊を視る事は可能”という事になる。そして、何も知らずにそれを目撃すれば“幽霊を視た”と認識する人間もいるだろう。まぁ、それなりに珍しい自然現象である事は確実だと思うがな」
「はぁ、まぁ、理解しましたけどそれって、霊感って言うより……」
「そうだな。霊感の有無というよりは“運が良いか悪いか”って感じだな。これは」

 これ以上、納得がいく考え方は、今の俺の知識じゃ無理だからな。
 見ると、妹はすでにデザート類を完食していた(結構な量あったと思うんだが……)。それを見て俺は自分の注文したコーヒーを飲み干して立ち上がった。

「さて、もういいだろ? 出よう」
「あ、はい。ご馳走様でしたー」

 俺は「今日はやけに説明ばかりしている日だな」と思いながら、伝票の数字を見た。


――――ん? 財布にはいくら入っていたかな?



―――作者から一言

 どうも、元永です。マテリアルの二次創作は今回で三作目ですが、うん、一番の難産でしたね。これ。で、ちょっと言っておきたい事があるので、この場に書いときます。
 まず、作中のうんちくは勝手な憶測なんかが多分に含まれていますので、真に受けないで下さい。それと、結構適当なので、おかしな風になっている部分もあるかもしれません。
 あと、セリフによる説明文がかなり多くなってます。結構読みづらいと思います。ごめんなさい。
 ……以上です。

 では、また、小説を執筆する機会がありましたらよろしくお願いします。


公開:2006/05/05

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