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 “僕ら”が“彼ら”に出会ったのは、いつものようにユウの相手をしながら、往来を闊歩している時の事だった。














Ghostly Apparitions
筆者:元永


「ケイケイケイケイケイケイっ!」
「はいはい、なんですか、姫。というか、そう連呼されると“ケイ”なのか“イケ”なのか分からないんだけど?」
「そんな事は些細な事だよ、ケイ!」

 僕の名前は“些細な事”らしい。

「それよりも、ほらほら、あっち見て!!」
「ああ、こら、人を指差さない」

 そう、注意を促しつつ、ユウが指し示す方に視線をやると、そこには、僕と同年代に見える男性が、僕ら(正確にはユウ)に視線を向けて、眉間に皺を寄せていた。
 うん、“視える人”なら、そういう表情、しちゃう気持ち、凄く分かる。

「あれって、絶対、私の事見えてるよね!?」
「あー、いや、どうだろうね?」

 あの表情って、絶対、幽霊と関わる事を良く思っていないと思うんだけど……。僕だったら凄く嫌だし。

「いや、あれは絶対に見えてるって! という事で、ちょっと行ってくるねぇ〜」
「あ、ユウ! ちょっと?」

 ……、止める暇も無く、行ってしまった。面倒な事にならなきゃ良いけど……。
 一人で突っ立っていても仕方が無いので、僕はユウを追って歩き始めた。
 何やら話しかけているユウに対し、その人は完全に無反応……、いや、よくよく見てみると眉間の皺が深くなっている。……本気で関わりたく無いんだな、あれ。

「―――ちょっと〜、聞いてますか〜!」
「ユウはちょっと黙る」
「んー? 何よー、ケイのくせにー」

 小声で注意を促がした僕に対し、ユウが言い返してくる。……“ケイのくせに”て、なんですか?
 とりあえず、ユウの言葉を思考の外に追い出し(深く考えると死にたくなる事うけあい)、男性の方に視線を向ける。男性の方も、それに気づいて視線を合わせてくる。
 ん……、あー、こういう場合、どう言葉をかければ良いんだ?

「えっと、ごめんなさい」
「は? いや、君に謝られるような事は何も無かったと思うんだが?」

 うん、僕もそう思います。何言ってんだろうね? 僕は。

「あー、まぁ、今のは忘れてください。ところで、“あれ”見えてます? というか、見えてますよね?」
「あー! 私の事、“あれ”とか言って調子に乗りすぎ〜っ!」

 僕がユウを示しながら言うと、ユウは不満そうに声をあげた。当然、それを黙殺しつつ、僕は男性に視線を固定。それを見て男性は諦めたように小さく溜息を吐くと、肯いて見せた。

「ああ、一応な」
「ああ〜っ! やっぱり無視してたんだ〜! そんなんじゃ、人間関係上手くいかないよー?」

 いや、幽霊と積極的にコミュニケーション取ってる方が人間関係上手くいかない気がするけどな。
 男性は、僕から一瞬視線を外し、ユウを一瞥すると口を開いた。

「一応言っておくと、俺は“視える”だけで、幽霊の言葉やらは聞き取れん。だから、むきになって話しかけても無駄だからやめておけ」

 明らかにユウへの言葉だけど、僕を直視してのセリフだから、周りから見ると、僕に話しかけてるように見えるんだろうな、多分。

《だから、私が通訳してあげる、って言ったのに》

 唐突に、女性の声が聞こえたかと思うと、僕の目に驚愕の光景が飛び込んだ。

《ハロ〜》
「うわぁ!」
「うきゃぁー!」

 僕とユウは一緒になって驚きの声を上げた。

「うっわ、傷つく反応」
「姉さん、それは止めろと何度言ったら……」
「はいはい、分かってる分かってるって、だから説教は無し」
「明らかに、分かってない人間のセリフだな」

 突然、人の腹から女の人の顔が出てくれば誰だって驚きます! いくら幽霊が視えると言っても、僕の能力的にそういうネタは難しいしっ!
 ……ていうか、今更だけど、“姉さん”? ご姉弟?

「……ねぇ、雛太? 何でこっち見て話さないの?」
「周囲から変な目で見られる覚悟で、幽霊と面と向かって会話できるほど、俺は社会的地位という物を軽く見てはいない」

 うん、僕に視線を合わせて、そういうセリフ言われると、なんか変な感じですね。

「あー、また幽霊蔑視的発言」
「真っ当な主張だ」

 僕としては、男の人の発言に同意だけど、なんと言うか、男の人の方も普通じゃないよね? というか、さっきから視線を合わせてる僕とは、まったく会話をせずに幽霊と会話を……ん?

「幽霊と会話できないんじゃなかったっけ?」
「あっ! 本当だ! やっぱり、さっき無視してたんだ!!」

 僕の発言ではじめて気づいたのであろう、ユウが騒ぎ始める。男性は相変わらず僕に視線を固定したまま口を開く。

「姉さんだけ、特別だ」

 その発言に、姉と呼ばれている幽霊の女性が頬を赤らめた。

「あ、あらやだ。“特別”だなんて、…ぁ……でもそうね、私たちの間には、二人の間でしか意思疎通ができないくらい深い絆が――」
「死ね」

 放っておいたら、いつまでも続きそうなセリフを、男性の辛辣な言葉が遮る。ただ、幽霊に対するセリフとして正しいかは疑問だけど。

「や、私死んでる」
「姉さんを見てると、“物理的な死”が、イコール“絶対的な死”とは限らないと、考える事がある」
「は? 何を語り始めますか、この弟は」
「だって、精神的には明らかに“死んでない”だろ、これ。下手な人間より生き生きしてる」

 あー、よく分かる。身近に似たようなのがいるから……。

「ん? よく分からないけど、褒められてる?」
「……一言で言うなら“うざい”と言っている」

 何か、微妙に哲学的な話だと思ったけど、最後のセリフでぶち壊しだね。これ。

「ひどっ! 普通にひどっ!! いいもん、いいもん、そっちの“お仲間”の女の子と二人っきりでお話してるから!! 会話が成立する“お仲間”は久しぶりだしね!! お姉様の愛の深さを後から理解しても遅いんだからね!! 引き止めるなら、今しかないわよ!?」
「いいから、さっさと行け」
「〜〜〜っ! 行くわよ、行くわよっ! 行けばいいんでしょ!!」
「あ、え? うわきゃぁ〜!」

 あ、ユウが拉致られた。正面には、ホッとしたように軽く息を吐く表情。
 ……気持ちは凄く分かる。

「……」
「……」

 なんだか、微妙な空気。

「とりあえず、自己紹介でもするか?」
「…そうですね」
「ふむ、では俺から、名前は見澤雛太(みさわ ひなた)、一応、高一だ。で、さっきのうるさいのは観加(みか)と言って、不本意ながら姉だ。生前は……、ただのオカルトマニアだ」

 考えて出てきた紹介がそれですか……。てか、オカルトマニアで幽霊って、なんか凄い存在だな。ある意味“オカルトを極めた存在”って感じ。

「あ、と、僕は式見蛍です。それで、さっき、うろちょろしてたのがユウ」
「ユウ? ……ふむ、字は“愉快”の“愉(ゆ)”に“鬱陶しい”の“鬱(うつ)”で“愉鬱(ユウ)”だろうか?」

 “愉快で鬱陶しい”って……、この人、何気にひどい事言うなぁ……。なんとなく当てはまってるところが凄いけど。
 でも、ちょっと反応に困るセリフだよなぁ。
 僕の表情から、それを読み取ったのか、彼は続けて言葉を重ねた。

「いや、流してくれて構わない」

 ……、ひょっとして、冗談、だったのか? 真面目な顔での発言だから、判断つき難いんだけど……。

「一応、遊ぶ兎で、遊兎(ゆう)って事になってますが……」
「ほぉ、中々、詩的だな」

 ……、なんか、僕、ポエマー認定? ちょっと、ショックだね。

「? どうした?」

 不思議そうな表情で、尋ねてくる。あぁ、僕が名付けたって知らないからな。

「いえ、なんでもありません。それで、ユウが生きてた時に、何してたかってのは分かりません。記憶無いらしいんで」
「記憶喪失か、まぁ、そういう事もあるだろうな」
「……、やけにあっさり信じますね」
「? 別に、他の幽霊を見れば不思議でも無いと思うが?」
「……、どういう事ですか?」
「ふむ、とりあえず、姉さんや彼女のような幽霊が“特殊”なのは分かるだろ?」
「ええ」

 それには同意する。ユウを“普通の幽霊”として紹介されても、とても信じられない。ユウに適切なカテゴリーは、……“セクハラ幽霊”? それか“味覚破壊幽霊”? それとも“萌え幽霊”? ……最後のは止めとこう。なんか別の意味で取られそうだ。

「で、一番多く見かける幽霊というのは、死んだ瞬間の“感情”というか“状況”をそのまま形にしたようなものだろう?」
「ああ、確かにそうですね」

 はっきり言って、事故死した幽霊とかは、見ていて気分の良いものではないのは確かだし。

「そういった幽霊には、生前の“記憶”や“人格”が残っているようには、少なくとも俺には見えない。それが“普通の幽霊”であるなら、彼女の記憶喪失は当然と言って良いし、むしろ人格が残っている事の方が驚きに値する。と、俺は思う」
「あー、なるほど」

 どうも、僕の能力もあってか、ユウとは人間と同じような感覚で接してたから、記憶喪失が“異常な状態”だと認識してた。
 でも、言われてみれば、幽霊にとっての“正常な状態”というものを、僕は全く知らないんだよな。
 彼は一瞬、ユウ達に視線をやる。僕も、そちらに目をやるが、しばらく話は終わりそうに無い。

「さて、何を話そうか、と言っても、共通の話題は幽霊関連しかない訳だが……」
「はは、確かに」

 自己紹介が終わったばかりの、僕たちでは共通の話題は、本当“幽霊”しかないわけで。

「じゃ、情報交換、といこうか、まぁ、専門家ではないから、正しい情報は提供できないが、全く役に立たない、という事も無いだろう」
「そうですね。正直、同じ立場の人と話せるだけでも、助かりますし」

 鈴音や先輩には、ユウの事を話しているから、それほど神経質にはなっていないけど、やっぱり“同じ立場の人”は別格だと思う。

「それじゃ、とりあえず、俺が今まで考えていた事でも垂れ流すか」
「あ、はい、どうぞ」

 彼は「うむ」と、一つ肯く。なんだか、ちょっと、先輩を思わせるなぁ、この人。

「俺は“幽霊”というのは、俺たちよりも高位の存在なのではないか? と考えた事がある」
「高位?」
「ああ、俺たちが“三次元の住人”だとしたら、幽霊は“四次元の住人”なんじゃないか、とね」
「なんで、そんな風に?」
「一つは情報量だな」
「情報量?」
「人間は、基本的に幽霊を“観測できない”だろ? だが、幽霊からは普通に“観測できる”、この時点で人間と幽霊が外部から取り入れられる、情報量の差は明らかだ」
「……確かに、それはそうですけど」

 さっきの話とのつながりが分からない。

「俺たち、三次元的存在が、二次元――例えば紙に書かれた情報を読み取るのは簡単だろ? 縦と横の情報を、違う“高さ”から見下ろす事ができるからな」
「そうですね」
「それなら、仮に二次元に生物がいた場合。紙に書かれた情報を読み取れるか? と考える訳だ。これは俺たちから見れば、“壁の向こう側の様子を認識”するようなものだ。難しいだろ?」
「確かに、そうですね」

 なんだか、話が難しい方向に進んでいる気が……。

「ここから分かるのは、俺たちより次元が上の存在は、俺たちよりも得られる情報が多い。という事だ。そのため、“幽霊は四次元の住人では?”という疑問につながる。――ここまでは良いか?」
「ええ」
「ああ、後、もう一つあるんだが……」
「なんですか?」
「俺たち三次元の住人は“縦”“横”“高さ”方向の移動は行えるだろ? それなら、幽霊が四次元の住人としたら“縦”“横”“高さ”“時間”方向の移動が行えるんじゃないか? と考えたんだ」
「……、え!?」

 一瞬、何を言ってるのか分からなかったけど、その言葉の意味するところは、

「時間移動、ですか?」
「ああ」
「でも、それはいくらなんでも」

 ユウにそれらしい素振りは見えないし。僕の考えに察しがついたように、彼は言葉を続ける。

「彼女らは、時間を移動するための“手段”を知らないだけ、なんじゃないかと、俺は思うわけだが」
「知らない?」
「俺たちは、縦、横、高さ方向に移動できる。とさっき言ったが、重力の影響を受ける高さ方向への移動は、難しいだろ?」
「ええ」
「だが、現在の人間は、空も飛べれば宇宙へも行ける。それは、そのための“手段”を知っているからだ」

 ……。なんだか、言いたい事が分かってきた。

「それに、俺たちの“移動”の際の障害は“重力”だけじゃない。“高さのある障害物”だって邪魔だ。そうすると、三次元の住人が移動するときの最大の障害は“高さ”という事になる」
「それは、……確かに」
「だが、幽霊はあたかも“重力が無いかのように移動”するし、“障害物だってすり抜ける”、幽霊にとっては“高さ”さえ、障害足りえない訳だ」
「だから、手段さえあれば、幽霊は時間移動できる、と?」
「そして、その手段は人間が時間移動するよりも、はるかに“簡単な手段”だ。と俺は思っている」
「……」

 なんだか、とんでもない話になってきましたよ? 誰か助けて。

「さて、小難しい話は、この辺にしとこう。向こうも終わったみたいだしな」
「え? あ、はい」

 助かった?

「はいはい、待った? こっちでは何話してたのかな?」
「別に、大した事は話してない」

 なんか、機嫌が直ってる。てか、かなり大それた事、話してた気がしますが? あなた。

「そっちこそ、何を話してたんだ?」
「ん? んー、とりあえず、結論は“男なんて最っ低!”で落ち着いたけど?」
「……」
「……」

 あちらはともかく、ユウの言う“男”といったら、僕しかいない訳で……。うーん。

「あ、あと、幽霊にも“萌え文化”は浸透してるんだな、って」

 何を喋った。ユウ! 反射的にユウの方を見ると、「えへー」としまりのない顔が出迎えてくれた。
 あ、駄目だ、これ。別世界に旅立っている。

「ふむ? よく分からんが、まぁいい」
「あー、ま、あんたには縁遠いだろうけど、単語くらい知ってるでしょ? “萌え”」
「確かに、単語は知っているが、その概念を理解する事は諦めたからな、俺は。それより、結構時間を食った。もう帰ろう」

 相変わらず、僕の方を見ながら、幽霊と会話する。どうも、慣れないんだけどなぁ。これ。

「そう? それじゃ、ユウちゃん、今度あったら、またお話しましょうね」
「あ、はい、もちろん!」

 なんだか、分からないけど、仲良くなったらしい。





 彼らと別れてから、しばらくして、僕は気になっていた事を聞いてみる事にした。

「ユウは何を話してたんだ?」
「ん? 気になる?」
「そりゃ」

 “男なんて最っ低!”という、結論に至った経緯は是非とも知りたい所だ。
 ユウは人差し指を口に持っていって、考えるような仕草をしてみせる。

「んー、秘密♪」
「……何を喋った?」

 そういう態度を取られると、かなり不安になるんですけど。

「秘密は秘密〜」
「……」

 あー、すんごい不安だぁ〜。―――もう死ぬぅ〜。



―――作者から一言

 うん、なんか、凄いこと書いた。
 まず、色々小難しい事を喋ってますが、あまり気にしないでください。お願いします。
 私自身、なんかとんでもない事を書いてるなぁ、と思ったんですよ“時間移動”ってあんた。幽霊物では無縁な単語だと思う。
 時間移動、とか書く気、無かったんだけどなぁ。なんか、流れ的にこうなりました。
 でもまぁ、今回は全編通して蛍視点ですので、私の作品でははじめて二次創作らしい二次創作になったかな、と思います。

 それと、これに登場した見澤姉弟は私のオリジナル小説“Ghostly Apparition”のキャラです。
 それでは、作品を読んでくださって、ありがとうございましたー。


公開:2006/05/09
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